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ある日の会話
知人:「最近ぱちんこ店がたくさん廃業してるって聞いてるけど、やっぱり規制が変わって厳しいんだ?」
俺:「規則他が改正されたのは今から4年も前のこと。今厳しいのは”官製不況”というよりも、メーカーとホールの自傷行為だよ。機械は高いわ、平常営業で抜きまくるわ、ファンが減ってることの自覚が全くないんだよね」
いろんなところで解説してきたことだが、本コラムでははじめてのこととなる。ひとりの物書きとしてどのような表現が相応しいかかなり長い期間考えてきた。それがまとまったので本稿なのだが、まずは話の筋を紹介しておく。
今、ぱちんこ業界はぱちんことパチスロとで様相が全く異なる。5号機パチスロは周知のとおり、4号機爆裂機時代のツケを払うことになり主に射幸性に関する規制が強化された。それでは苦しいということで#247のような陳情を日電協が中心となって動いた。結果的にいくつか要望は通ったが、RTをはじめとして出玉性能(=つまり射幸性)を緩和する可能性は基本的にフタをされたままである。
同要望を実現する大きな援護となった韓国の李明博大統領も、米国産牛肉輸入問題で政権運営の危機を見る。常識的に考えれば既に援護力は低下したはずだ。パチスロメーカーらは、それでも再度緩和の要望に動きつつ、型式試験制度の盲点を必死に探しつつ規制等の改正を狙うが、その心は「射幸性を高めたい」の一点。この一点について警察庁がNGとしているため、少なくとも射幸性の緩和はこれからも実現することはないだろう。
一方のぱちんこ。平成16年の規則改正をキッカケに、日工組は内規による大幅な仕様変更に踏み切った。初当たり500分の1という低確率や確変継続率等の仕様変更である。これはもともと規則が許容していた範囲ではあるが、見方を変えると各種規制が射幸性の歯止めとして業界の良心を信用していた部分でもあった。このため、急激な射幸性の高まりが実現し、これを問題視した警察庁の指導をキッカケに日工組は内規を再び改正する。
しかし、警察庁と日工組のこのやりとり、基本的に日工組側の勝利である。なるほど初当たり確率の下限を400分の1(よりも高く)とした部分は射幸性の制限ではあるが、実はそれだけだった。その他問題視されていた高過ぎる確変継続率や突然確変等の表現等も全てうっちゃった(基本的に現状維持)。このあたりは警察庁規制ロビー力が「日工組>>>>>日電協」であることを証明している。
こうなると、5号機が不振の今こそぱちんこの時代のはず。しかし、そのぱちんこが4号機爆裂機ほどは盛り上がらない。
僕に言わせれば理由は極めて単純明快だ。「ホールが釘を閉めすぎて抜き過ぎるからファンが減っている」のだ。
※「ファンは減っていない」という人はたぶんいないと思うが、ここでいくつかの統計データを出さないのは(あまりいいたくはないが)基本的に信用できるデータがないからだ。もっとも権威がありそうなレジャー白書ですら06年度で市場規模27兆円強となっているのだが、この数字はどう考えても少ない。まあ、それは表題とは関係はないことだが。
そもそも商売としての粗利益額(率)の目標設定は、個々のホールの自由だ。それに、出しても集客できないところ、抜きまくっても集客するところ、ももちろんある。しかし、「諸条件が全く同じなら、ファンの満足度は抜かない方が高い」のは当たり前。そして、今のホールが「抜きまくっている」のは、個々の問題ではない。業界の構造的な問題が原因となっている。
ぱちんこ業界は、遊技機の販売において長いこと「メーカー>ホール」というパワーバランスが働いている。これは検定制度が理由だ。その中でも頻繁に話題になるのが「抱き合わせ販売」だ。これは今でもあるし、おそらくこれからもなくならない。しかし「抜き過ぎ」の構造的原因は抱き合わせ販売ではない。
最近のぱちんこメーカーの販売方法トレンドは「大量販売先行導入」である。これこそが「抜き過ぎ」の原因であり、このためにファンが減っている。
この「大量販売先行導入」は、抱き合わせ販売と同じくらい業界に蔓延していた販売方法である。ではなぜこれが問題なのか。その台数が極端に増えているからである。
10年ほど前なら「1島導入で先行導入、1島未満なら2週間遅れ」という販売が当たり前だった。しかし今は違う。「100台導入なら先行導入、それ未満なら2ヶ月遅れ(チェーン店であっても先行導入台数は1店舗導入台数で計算)」という極端な偏りが見られるようになっている。
これがなぜ「抜き過ぎ」につながるのか。一番大きいのは「中古市場の拡大(と便宜向上)」だ。大量先行導入の後に遊技機能力が低いと見たら、容易にチェーン店移動や転売をすることができるようになっている。
ピンとこない業界関係者ではない読者もいるだろうから、流れを説明する。
<大量販売先行導入その後の流れ>
1. 30万円以上する新台を50台から100台導入する。
2. 先行導入の台数縛りがあるため競合店に導入される確率は下がる
3. TVCMなどで話題の新台は「新台入替」で出さなくても新しいもの好きの客だけで充分集客できる
4. 1日1万円前後の目標粗利益で走れば、1ヶ月ちょっとでかなり償却できる
5. 自社チェーン店の未導入店にチェーン店移動で動かす。
6. 移動元の店舗は抜き過ぎでさすがに集客が鈍るが、減台効果で平均稼働は上がる。移動先の店舗にはほぼ償却された機械が導入され採算を取るのがかなり容易
7. このあたりで先行導入できなかった競合店の導入がそろそろはじまるが、既に採算ベースになっているため少し出すだけで相対的な集客効果が高まる
8. 後発導入店舗は競合先行導入店の存在が大きいため、同じく高い目標粗利益を設定して早めの償却を狙う
9. ある程度収益を確保できた後、人気機種ならここからはじめて大事に使う。人気機種ではないと判断すれば中古市場にて転売する(30万円代の新台導入を控えた店舗が安く買う)
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注意したいポイントはいくつかある。まずは、上記の流れがたった2〜3ヶ月ということ。この短い期間に高い粗利益で苛め抜かれた機械は、もはや全国のファンの信用をなくしているため集客効果も低くなる。よほどの人気機種でないとこの後の稼働は見込めない。
粗利益金額についても少々。業界関係者ならわかることではあるが、ダイコクSISなどによると4号機爆裂機時代のぱちんこの1日1台あたりの平均粗利益額は3,500円ほどである。上記では1万円と例示したが(これでも高いのだが)、中には「エヴァ4、冬ソナ2入替初日で2万円」「花の慶次増台初日で2万5千円」などのミリオンゴッドもびっくりするような目標粗利益もあった。
こんな目標だと、釘はムチャクチャになる。スタートはもとより確変・時短中のベース値を下げ、大当たりの出玉も下げる。エヴァ4で2万円抜く調整だと(換金率にもよるが)大当たりの多くのラウンドで玉入賞が9カウントまでいかない。ファンは「大当たり中に玉がアタッカーに寄らないことにイライラし、確変・時短中に玉が減ることにイライラする」のだ。大当たり時でさえイライラするのであるから、もはやファンの楽しい時間は「確変が大連チャン」するとき以外になくなる。
「ファンが大連チャンすることのみを目的に遊技する」状態とはかなり射幸心をそそっている状態ということも言える。まともな目標粗利益なら大当たり1回でも楽しいはずだが、今のファンは大当たり1回ではまず喜ばない。結果的に確変継続率に依存した遊技機開発がすすむことをも助長する。
このような問題のある商慣習が成り立つのには理由がある。ひとつは「遊技機メーカーの都合」であり、もうひとつは「ホールの都合」だ。
遊技機メーカーはとにかく売れ残りリスクを少なくして販売したい。この大量販売先行導入という方法は抱き合わせ販売とは違い独禁法には抵触しにくいし、販売開始と同時にまとまった注文数を確保できるため部材等の在庫リスクも減少させることができる。何より買うホールがあるのだ。
ホールは導入資金が用意でき、かつ、チェーン店移動先となる店舗もあるのであれば、上記のような先行導入後のような皮算用が可能だ。何より競合店に先んじて早めに大量導入すれば抜いても抜いても客が来るのである。
この流れ。メーカーと先行導入可能なホールは少ないリスクで高い利益を狙うことができる。この利益はどこから出ているのか。当たり前のことだが「出さない店でも喜んで打つファンのお金」と「先行導入できないホールの不利益」が流れているだけである。だから「ファンは減る」のだし「まだまだホールも潰れる」ことになる。ではある程度淘汰されてそれで終わるのだろうか。
そうではない。少し考えれば誰でもわかることだ。
「先行導入できないホールが潰れていく」
→「先行導入できるホールが残りファンが減る」
→「ファンは減っているため、残ったホールにも格差が生じる」
→「メーカーの大量販売先行導入にホールが応じるメリットは『導入できないところよりも有利』だから。全てが先行導入となることはありえないため、必ずここからも先行導入できるところとできないところとに分かれる」
→「先行導入できるホールが残りファンが減る」
→以下、繰り返し
これが現実だ。こんなことを内包している業界が「官製不況」などと言うのは間違っている。4号機爆裂機と比べても遜色のないぱちんこがゴロゴロしているのに、爆裂機と比べてイマイチ盛り上がりに欠けるのにはこんな理由があるのだ。
大量販売先行導入縛りのぱちんこメーカーとそれに応じるホールは「ファンを減らしたことでリスクの少ない利益を得ている」のだ。
ちょうど大量販売先行導入の縛り台数が急増した時期に重なっているし、ただでさえ最低賞球数3個のキツイ仕様の時代だからこそ、この2年ほどでいわゆる甘デジタイプの機械がかなり普及した。またこの1年ほどで1(2)円貸玉料金営業がかなり普及した。当たり前だ。これは「低消費金額の需要が高まった」のではなく「高消費金額ぱちんこへの意趣返し」なんだ。
これは持論だが「抱き合わせ販売よりも大量販売先行導入の方がタチが悪い」。抱き合わせ販売は「主製品の能力が高いので従製品の低能力を吸収してチャラ」となることが多いが、大量販売先行導入はどのような帰結であってもファン人口を低下させる。残ったファンは「ヘビーユーザー、かつ、高い客単価層」となる。つまり社会に弓を引く方向でもある。
ファンが減るということは全ての業界関係者にとってマイナスに作用する。しかしこの流れがなくならない。大手である京楽やSANKYOなどが、マルハンなどが相対取引の商慣習をやめればなくなるかといえば、そうではない。この流れは中堅メーカーや中堅ホールにも蔓延しているため、誰もやめようとはしない。
「メーカーもホールも先のことを考えないバカなのか?」とも考えた。朝三暮四の猿かと。しかししっくりこない。何か違っている。バカだったら金儲けに失敗するはずだ。しかし個別にはメーカーもホールもこの流れで収益を上げているのである。で、いろいろ考えたあげく、一昨日ようやく気がついた。これはゲーム理論の定番的命題「囚人の罠(ジレンマ)」なんだ。
<囚人の罠(ジレンマ)>
警察が二人の容疑者を捕まえた。しかし証拠が弱い。そのままでは微罪になってしまう。
このため警察は司法取引を用いて二人を自白に追い込む。
司法取引の条件は「二人とも黙秘したら刑は微罪。二人とも自白したら刑は普通、オマエが黙秘してももう一人が自白したらオマエの刑はより重くなりもうひとりは最も軽い罪」である。
二人はともに相談することはできないし、連絡も取り合えない。警察の誘導に負けて最終的に二人とも自白してしまう。
(詳しくはこちら)
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「遊技機メーカーは大量販売先行導入縛りをやめないとファン人口が低下する」
「ホールは大量販売先行導入をやめないとファン人口が低下する」
囚人の罠に照らせば「大量販売先行導入縛り」は「自白」である。結果的に最善であるべきはずの「ファン人口増加(今の規制では現状維持が精一杯か)」に向かえず、ともに「自白」をして「ファン人口減少」の道を進んでいるのだ。
「ゲーム理論を読みとく(竹田茂夫著:ちくま新書)」によれば、囚人の罠には4つの特徴があるという(以下、内容を要約)。
1. 囚人は自分一人の利害に照らし計算し、もっとも都合の良い行動をとる
2. 囚人は利害計算のみを頼みとし、他人(社会)から孤立した個人である
3. 囚人は言葉を使わないか、使っても言葉を信じない
4. 囚人は自分たちで状況を変えられない
ゲーム理論の定番的命題だけに、古くから分析もされているのだ。その通りだと思う。
メーカーはTVCMで「遊パチ」マークを謳うが、信用すべきではない。なぜなら「言葉を使わないか、使っても言葉を信じない」者の言葉であるからだ。ホールは毎日のようにイベントを行い出すかのようなアピールをしているが信用すべきではない。「同じく言葉を信じない」者の言葉なんだ。
そろそろぱちんこ業界はこの「大量販売先行導入」という悪習慣を是正するため動きだす必要がある。今はぱちんこに限った習慣ではあるが(パチスロは台数縛りがあってもその台数が100台などのムチャクチャな台数ではないから)、これがパチスロにも転移したらただでさえ苦しい5号機だからさらに悪化するだろう。
ぱちんこに特化した悪習慣だから、日工組、全日遊連、日遊協あたりの仕事だと思う。もちろんキッカケはメーカーの販売方法だから日工組にそれを是正する意思があるとは考えにくい。ならば全日遊連に期待したいところだ。繰り返すが「抱き合わせ販売よりもはるかにタチが悪いのが大量販売先行導入」である。ここに断言しておく。
規則改正から4年も経過しているのに、いまだにぱちんこ市場(規模等)が縮小している最大の原因は(パチスロ専門店を除けば)「官製不況」ではない。「囚人たちの自傷行為」が最大の原因なんだ。ここの読者に少しはいるぱちんこファンたちへ。「ムチャクチャな釘の店で打つのをやめる」ことで囚人たちを解放してやって欲しい。

POKKA吉田 |
Name:Pokka Yoshida
Age:over 30 years old
Sex:Male
Special Ability:talking
Peculiarity:much drinking and thinking
PrivateArea:Konoikeshinden - KadomaDanchi
→Yoyogiuehara - Takenoduka
Hobby:Secret!
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2004年4月からフリーランスへ。ピー・ドット・ジェイピー運営責任者。
ぱちんこ業界の良心を目指して 【EX】ネタは手補給・手回収 を執筆。 |
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